2017.07.24[月] 映画『咲-Saki-』Blu-ray発売記念トークショー感想レポ(前編)

実写映画『咲-Saki-』
失敗作も多い実写化の中で、多くのファンに受け入れられた作品です。
こちらのBlu-ra発売を記念したイベントが、23日に開催されました。
小沼監督もゲストにいらっしゃるということで、咲-Saki-クラスタとしては見逃せないイベント。
阿佐ヶ谷まで出向いて参加してきたわけですが…。
一言でいうと、

すばら!
二言でいうと、超すばら。
本当に興味深いイベントでした。
これはもっと多くの方に知ってもらいたい!
というわけで、今日のブログではイベントをできるだけ詳細にレポしたいと思います。
それでは、スタート。
まってまーす!#咲実写#咲実写イベント pic.twitter.com/9oZl0Ebox9
— 小篠恵奈 (@ena_koshino) 2017年7月23日
今回、ゲストでいらしてくれたのは、
「監督」小沼雄一さん
「井上純役」小篠恵奈さん
「津山睦月役」山地まりさん
この3人。
撮影から一年以上たった今だからこそ話せる咲-Saki-トーク。
これが、とにかくぶっちゃけトークの連発だったのでご紹介。

トークのテーマは、こちら。
「咲実写化2.5次元演出戦略」
なかなか重々しいタイトルですが、要するに
実写映画ってめっちゃ大変なんだぞ!お前らは見てるだけだから解んないかもしれんけど!
ってこと。
開幕から本音が飛んできて大盛り上がりでしたよw

まず、切り出したのは2016年9月2日の話から。
そうです。
咲-Saki-の実写化が発表された日です。
なんと咲実写がクランクアップしたのは9月1日。
撮り終えた次の日が発表だったそうです。
この実写化発表。
当時の世間の反応をスクーンに映して紹介してくれましたが…。
「約束された失敗作」
「やめてやめてやめて」
「これ企画したやつ頃しにいく」
「KカップのJKとか誰ができるんだよ」
ああぁぁ!!!!
監督やめてください!!
もういい!!
もういいですから、やめてください!!!
ほんとごめんなさい!!!!
言いたい放題いっててすみませんでした!!!!!
監督「これ、読みましょうか?」
ほんとごめんなさい!!!!
今だから笑い話かもですけど、実写化の発表は荒れました。
僕も否定的な感情の方が強かったですし。
ちなみに、プロデューサーは殺されると思ってアカウント消したそうです。
ほんとごめん!!!
けど、監督的にはそんな冷たい反応は想定内だったそうな。
本題の前に、
「どうして実写化は受け入れられないのか」
から掘り下げてくれました。
現場サイドで働く人間から、この切り口で話が聞けるのは貴重ですよ。

まず上げてくれたのが、「大人の事情」というもの。
これは解りますよ。
予算とか、納期とか、スポンサーからの要望とか、いろいろありますものね。
その中で、一番実写化が荒れる原因。
「原作からの改変」
これ。
いわゆる原作レイプと呼ばれる改悪。
僕も前から疑問だったんですよ。
どうしてわざわざ原作というベースがあるものを、わざわざ変えてしまうのか。
これについて、小沼監督は
「改変した方が、楽」
と語ってくれました。
改変をするメリット。
それは、
「予算、尺を計算できる」
髪型ひとつとっても、原作を再現するのは大変。
そこを変えるだけで予算や手間は軽減できます。
見た目も自然になりますしね。
「監督の作風が出せる」
原作というのは”与えられたもの”らしい。
自分が請け負った以上、俺だったらこうする!という想いが出てしまうもの。
クリエイターのサガかもですね。
「改変した方がクオリティがあがる」
例えば原作だと雨が降ってるシーンがあったとする。
撮影ごとに着替えたり、セットを直さなければならない。
これを晴れに「改変」すれば、その分の予算を他にまわせるへなどなど。
この「クオリティが上がる」という発言は、びっくりでした。
むしろ下がると思ってましたから。
これは監督という制作サイドならではの視点だな~と感心しました。
これらのメリットから改変は「楽」ということがわかります。
けど、咲-Saki-はあえてこれをやめた。
楽ではなく「苦」。
難しい2.5次元への挑戦に踏み切った。
改変するのではなく、どこまで原作を再現できるかにこだわった。
どうしてか?
咲-Saki-は10年以上続く作品で、熱心なファンが多くいる。
その想いを無視できない。
だからこそ、大変な道を選択した。
ファンからすれば当たり前のこと。
その当たり前が一番難しいはずです。
本当に感謝します。

だが!
咲-Saki-の実写化は本当に難しい。
なぜ難しいか。
監督が語る、咲-Saki-の困難なところ。
「咲-Saki-には授業や家庭のシーンがない」
あ、確かに。
高校生がベースなのに、まるで生活感がない。
まず、ここが難しかったそうな。
「次元間衝撃波」
なんか突然、必殺技みたいな名前が飛んできたぞww
次元間衝撃波?
どんなパワーワードだよ。
これは何かというと、普段見慣れたマンガのキャラを始めて実写で見た時のショック、だそうな。
実写で見ても違和感なく受け入れられる。
これが理想だけど、実際はそうはいかない。
そもそも、咲-Saki-のキャラクターは現実離れしたキャラが多い。
ピンクの髪はどうするの?
身長は?
おっぱいは?
このバランス。
まず実写にするにあたって、ピンクの髪は再現できない。
だから、妥協点として「ピンクベージュ」に変更。
こういう歩み寄り。
どこまで原作に近付けつつ、実写にしても破綻しないライン。
そこを練りに練って、次元間衝撃波を少しでも緩和させる。
それが難しかったそうな。

それを踏まえて咲さんの再現度を見てみると、なるほど~と感じますね。
山地まりさん曰く浜辺美波さんは二次元フェイス。
実際、僕も「すごい咲さん可愛い!」と思いましたもん。
このあと、監督お手製のコラ画像も紹介されたんですけど、あまりの絵図だったので秘密にしておきますw
「ギャグとシリアスの切り替え」
これは、実写ならではの悩みだそうです。
どういうことか?
例えば、原作のシーン↓

これ、同じ決勝戦内でのやりとりです。
こういったギャグとシリアスの切り替えは、漫画やアニメだと成立する。
けど、これを実写でやると完全におかしくなるそうな。
見てる人は「この女の精神状態はどうなってるの?」と混乱してしまう。
感情移入できなくなってしまう。
だから、今回の実写版ではキャラの感情は一貫性をとった。
控え室での清澄がお通夜モードだったことに改悪だと怒ったファンもいるが、それは覚悟の上。
このバランスも実写化の上で難しい部分だそうです。
「尺の問題」
ラストはこれ。
限られた時間内で話をまとめなければならない部分。
アニメから比較すると、
実写ドラマ→アニメの半分
実写映画→アニメの四分の一
これだけの尺しかなかったそうな。
この時点で、ある程度の原作をいじる必要が出てしまう。
実写化で「改悪」とよばれる部分。
本当に咲-Saki-の実写は課題が山積みだったわけですね。

そんな問題だらけの咲-Saki-。
小沼監督はどうしたか?
ここからが、監督の采配が光る話です。
まず、咲-Saki-を青春部活ものにした。
能力バトルものは、長期連載向け。
次から次へと強い敵が現れる。
どこまでも続けられる。
一方、青春部活ものは終わりがはっきりしている。
大会が終わる、卒業する、帰宅する、などなど。
区切りをつけやすく、映画において観客に「終わった」と認識させるには、この方向性で作るのが最適と考えたわけです。
そして、そのコンセプトの元、咲-Saki-長野編で見せなければならない部分をおさえる。
どこをカットしてもいいか。
どこをカットとしてはダメか。
監督が見出した、長野編のテーマ。
それが、
・咲と和の出会い
・衣の物語
このふたつ。
いろんな要素はあるが、この2点を中心にまとめれば作品として成立する。
そして、全ての背景には麻雀がある。
ここ。
ここさえ押さえておけば物語になる。
監督はそう判断したわけです。
その想いの象徴とも呼べるシーンが、こちら↓

勝利を喜ぶ清澄メンバーと、それを見つめる衣。
原作にはない、実写だけのオリジナルシーン。
それぞれ独立して動いてた「咲と和の出会い」と「衣の物語」。
全てが収束する場所が、ここ。
このシーンを撮るために、これまでの流れがあったのです。
監督は言いました。
長野編は「衣の笑顔から逆算して作った」と。

衣の笑顔が実写咲-Saki-のゴールだったんです。

だから、「衣を特別から解放してくれたリンシャン使いに感謝~」のセリフも、原作から透華に変えた。
ここがゴールだから。
ちなみに、ここのハギヨシのエスコートの仕草はアドリブだそうだ。
すばら!
そして、そんなアドリブにさも当然のように歩き出す透華役の永尾まりやさんの貫禄よ。
すばら!

清澄と龍門渕。
この2つの柱をバランスよく描き、集約させた。
それが原作にはない、実写咲-Saki-の完結。
なるほど。
よくまとまっていたと思います。
ただ…。
これによって弊害も出ました…。

そうです。
京ちゃんです…。
これは監督も苦渋の決断だったみたい。
京太郎を出してしまうと、どうしても咲との関係性を描かなければならない。
単純に尺の問題だけでなく、視聴者が「この子は重要人物なの?」と認識してしまう問題も。
衣の物語にさらに京太郎も加わると、誰に焦点をあてた作品なのか解らなくなるので、泣く泣くカットしたそうな。
それともうひとつは、衣のホラー化。
笑顔をゴールにするために、途中のシーンではいっさい笑顔なし。
結果ホラーになった、と。
僕的には、これはいい演出だと思いましたけど。
ラスボスは誰なのか明確になりますしね。

そんな感じに、実写化にあたっての課題や解決策を熱心に語っていただきました。
40分くらいあったかな?
本当に濃厚なトークでしたよ。
そんな監督の話を聞いてて思いました。
実写の咲-Saki-がファンの中で受け入れられた要素。
もちろん監督の采配もあります。
それ以上に、感じました。
監督の咲-Saki-に対する理解の深さ
原作を本当に読み込んで理解してくれるのも解りますし、何より、咲-Saki-と真剣に向き合ってくれた。
これがとにかく嬉しいです。
僕たちが大事にしている作品を、監督も大事にしてくれた。
いろいろお話を聞きましたが、実写咲-Saki-が成功した要素は、シンプルにここなんじゃないかと思います。
苦難の道だった2.5次元への挑戦。
本当にありがとうございました。
そんな咲-Saki-トークですが、実はここで半分ですw
いったん休憩に入ったあとは、質問コーナーになったんですが…。
ここでも興味深い話が飛び出しました。
が!
今日はここで時間切れ。
すみません。
明日も仕事なので、そろそろ寝ないとマズいです。
というわけで、後半のレポは明日書きます。
まだまだ続くよ咲-Saki-トーク!
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